里親家庭の実子に着目し,彼らがどのように成長するのか,折々にどのような意識を持つのかを,インタビュー調査から明らかにする。
著者:山本 真知子
大妻女子大学人間関係学部人間福祉学科専任講師(社会福祉士,保育士,幼稚園教諭)
ISBN 9784753311538

 私自身,里親養育に関して長年関心をもってきたが,里親家庭における実子に関しては,十分に関心を払ってこなかった。実子は場合によっては,年齢不相応なケア役割を担い,年齢相応な依存体験が家庭で十分に保障されないという面もあり,そうした状況から実子のヤングケアラーとしての側面を氏は明らかにした。
 全国里親委託等推進委員会による調査結果(2015)によると,里親家庭の約4割に実子が存在する。親が里親となることにより,実子は大きな影響を受ける。家族,児童相談所,里親支援機関等による実子への十分な説明や,実子の思い・言い分への傾聴はあらゆる過程において重要である。また実子は里親家庭で過ごす中で,委託された子どもと生活する歓びなど肯定的な感情をもつ一方で,委託された子どもの行動への驚き等を感じた際,自身の気持ちを親に率直に伝えることが困難な場合があるとしている。さらに共に生活するなかで親のサポートや委託児を気遣う実子の役割,委託児を思いやることでの我慢,親の思いへの妥協,親への不満を感じながらも社会では里親を賞賛することばがあることへの複雑な気持ちなどについて指摘している。このような視点で実子の心情の理解に努める里親や支援者の姿勢は重要である。ヤングケアラーとしての実子は他者に状況を説明することが困難であったり,思いを共有することが困難ななかで,孤立化傾向にあり,マイノリティ意識やそれに伴う自己否定感を感じることもある。(中略)里親は社会的に評価される一方で,その実子のネガティブな思いは顕在化しにくい側面がある。実子の意識は多様であり,多義性に満ちているだけに,そのメッセージについて支援者や研究者も伝えにくい面もある。だからこそ,実子の多様な現状に配慮し,個別的に検討を要するといえる。本書では複数の質的分析法を活用し,共通性と個別性に配慮した分析結果の記述がなされている。またヤングケアラー,障害児のきょうだい研究など隣接領域の先行業績から帰納的に実子との共通性を見出している。多様な観点から実子研究を深め,得られた知見は貴重である。著者は「おわりに」において,「自分自身の子ども時代は毎日実子として生きることに必死で,子どもとしての感覚をなくしていた」と書いている。こうした実子の声に耳を傾け,里親養育のあり方を検討する必要性を強く感じる。里親関係者に限らず,より多くの方々に読んでいただき,家族のあり方を考える一助としていただきたい。(林浩康)(「推薦のことば」より)